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コラム 2022年4月8日

ティーン層が映画館に押し寄せる!『余命10年』ヒットの背景を探る

3/4に全国公開された『余命10年』(配給:ワーナー・ブラザース映画)がティーン層の来場者を中心に大ヒットとなっており、4/4時点で累計入場者数170万人、興行収入は22億円突破しています。公開1ヵ月が過ぎてもその勢いは衰えておらず、どこまで記録が積みあがるのが期待されています。
コロナ禍の影響もまだあった中での公開にも関わらず、Z世代と呼ばれる若者層がなぜ映画館に足を運んでいるのか。
今回のコラムでは、この『余命10年』のヒットの背景について考察してみました。

『余命10年』はどんな映画?

『余命10年』は、数万人に1人という確率の不治の病にかかり、余命10年となったヒロインの物語です。原作者は執筆当時難病を患っており、文庫化を待たずに亡くなっています。そのため、フィクションでありつつも、ノンフィクション的な一面があります。

ヒロインを小松菜奈、ヒロインと出会う、生きることに迷い居場所を見失っている青年を坂口健太郎がW主演で演じ、『新聞記者』(2019年)『ヤクザと家族 The Family』(2021年)の藤井道人監督がメガホンをとっています。一般的な邦画では撮影期間は1か月から1か月半が多いのですが、本作は撮影期間を約1年をかけており、臨場感のある四季の流れを通して10年という歳月を表現しています。

劇伴・主題歌は『君の名は。』『天気の子』などでも音楽をプロデュースしたRADWIMPS。RADWIMPSが実写映画の劇伴を手掛けるのは初となります。これだけでもヒット要因としては十分に思えますが、そこからもう一歩踏み込んでみましょう。

根強い人気を持つ「病気との闘い×純愛」映画

(C)2022映画「余命10年」製作委員会

これまでも「病気との闘い」と「純愛要素」がテーマとなる作品が定期的にヒットする傾向があります。古くは『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、記憶に新しいところですと『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)や「キミスイ」の愛称で呼ばれアニメ映画も作られた『君の膵臓をたべたい』(2017年)などがあります。
これらの作品はヒットラインを大きく超える作品も少なくありません。最近では「涙活」といった言葉もあり、「泣ける」作品を求める層とニーズがうまく合致しているのでしょう。『世界の中心で、愛をさけぶ』は2004年の邦画第1位で、なんと85億円の興収、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は28.2億円、『君の膵臓をたべたい』は35.2億円と、いずれも大ヒットとされる数字を出しています。

ではこれらの3作品はどのような層が実際に鑑賞しているのでしょうか。

いずれの作品も10代女性の割合が最も多く、20代も含めると、どの作品も過半数が若年層女性が半数以上を占めていることがわかります。
今回の『余命10年』では全体の約60%が10代。そのうち約45%が女性です。『余命10年』の累計動員数約170万人のうち75万人が10代女子ということになります。

映画や小説の王道と言えるテーマの一つではありますが、「病気との闘い」と「純愛要素」の映画は普遍の人気であり、令和時代の若者の感性ともマッチしたようです。

コロナ禍でも影響が少ない若者向け作品

(C)2022映画「余命10年」製作委員会

このコロナ禍により映画作品のいくつかは少なからず影響は受けていますが、若年層向け作品ではその影響が少ないのも特徴です。
同じく10代の支持を集めた2020年公開の『今日から俺は!!劇場版』は緊急事態宣言明けからそれほど経っていない時期にも関わらず、最終興収53.7億円の大ヒットとなっています。2021年の『ハニーレモンソーダ』(興収10億)、『東京リベンジャーズ』(興収45億円)もスマッシュヒット。
そして前人未到の興収400億円超えを達成した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版』などこの数年は10代をメインとする若年層向け作品が高稼働をしています。

 

SNSを使いこなす世代が口コミで伸ばす

※データ出典:Filmarks Insights for Marketing

ティーン層はSNSを日常的に使いこなしていおり、口コミによる相乗効果も狙えます。
上記グラフは映画レビューサイトのデータを基にした「作品を観たい」と記録したユーザーの推移で、『余命10年』(黒線)、2020年の『糸』(青線)を公開日基準に並べて比較したものです。

『糸』のように、通常多くの映画では公開1、2週間ぐらいから前から宣伝プロモーションが活発化し、鑑賞意向のカーブが上昇。公開日をピークとしてその後のカーブは緩やかに落ち着く傾向があります。しかし『余命10年』では、公開日後もそのカーブの勢いが現時点まで伸び続けています。これは鑑賞者による「口コミ」の力によって公開後もさらに勢いが加速した結果であり、息の長いヒット作品となる特徴が見て取れます。
Ticktokでは、「#余命10年好きな人と繋がりたい」ハッシュタグが作られ投稿が活発となっており、Twitterでも「#余命10年」のハッシュタグで感想を投稿するユーザーが多く、SNSで口コミが大きく広がっています。

 

プロモーションにもSNSを積極活用、入場者プレゼントも

※余命10年公式サイトより

『余命10年』では、作品側も早くからSNSでのキャンペーンや告知を積極的に行っています。
Twitterでは映画感想をハッシュタグで投稿、Ticktokではコメントをすると、サイン入り映画ポスターなどが抽選で当たるキャンペーンを行っています。映画のPRをするだけではなくSNSでの口コミをダイレクトに増やせる一石二鳥の企画です。さらに人気の映画系Tiktokerコラボ試写会や、高校生限定試写会イベントなども設けています。

また今回映画館ではポラロイド風フォトカードなど、週替わりで入場者特典が配布されています。アニメ映画ではおなじみの入場者特典ですが、邦画実写では珍しい施策です。映画のテーマが「余命10年の主人公」の映画であるため、フォトカードという「思い出を残す」特典に特別感があります。こういったプロモーションも、10代の客層をつかむことに成功した要因かもしれません。

 

『余命10年』は作品の完成度はもちろん、プロモーション戦略の成功も相まって、メイン客層である10代女子の中でひとつのブームともいえる成功を収めています。若者世代が映画館に積極的に足を運ぶことが定着化しつつあり、今後もティーンや若者世代をターゲットに見据えた作品が多くラインナップされています。
今後もこうした若者世代向け映画のさらなるヒットが多数生まれる予感がします。

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