「鬼滅の刃」の勢いが止まりません。公開から一か月経っても、記録を更新し続けています。
永遠に更新不可能だと思っていた「千と千尋の神隠し」の日本記録を本当に塗り替えてしまうかもしれません。
公開以来、各方面からの話題を独占している「鬼滅の刃」ですが、サンライズ社でもサンライズ社なりの切り口で、この「鬼滅の刃」現象を考察してみたいと思います。
「鬼滅の刃」は過去類を観ない高い来場者推移
※サンライズ社調べ
グラフは、「鬼滅の刃」と直近の大ヒット作「アナと雪の女王2」と「君の名は」の来場者数の推移です。
シネアドは1劇場単位で販売されるので、来場者数を1劇場あたりに換算した数字を使用しています。
ぱっと見ですぐわかるとおり、「鬼滅の刃」の数字は圧倒的に高くなっています。
「鬼滅の刃」は2週目に入り数字を落としていますが、これは公開初日からの3日間のスタートダッシュが凄まじすぎた結果です。
2週目の数字も「アナと雪の女王2」「君の名は」の倍近い数字であることを考えれば、2週目に入りようやく通常の大ヒット作品の枠に収まったと言えそうです。
上映回数でも圧倒する「鬼滅の刃」
出典:プレコグ
次に上映回数を見ると「鬼滅の刃」1週目上映回数は143回。
これは「アナと雪の女王2」「君の名は」と比較して、やはり断トツに高くなっています。
7日間で割ると1日の上映回数は20回前後。
シネコンでの1日の平均的な上映回数を50回前後と考えると、「鬼滅の刃」の占有率はおおよそ40%程度になります。
公開初日に40回以上上映する映画館が現れ、映画館が「鬼滅の刃」にジャックされたかのような報道記事が各誌をにぎわせましたが、週間の全国平均は20回程度、占有率は40%程度というのが実際のところのようです。
とはいえ、日本の映画興行では今だかつてなかった現象が起こったことは間違いないです。
注目ポイントは「君の名は」。1週間上映回数40回は1日5回から6回程度。これは普通の作品の上映回数と同等程度。
あの大ヒット作品の上映回数は、普通作品並みだったという驚きの事実。しかも、初動の2週を過ぎた後でも上映回数が全く変わらないのもまた驚きの事実です。
1回あたりの来場者数は3週目に再上昇
※サンライズ社調べ
最後に来場者数を上映回数で割った1回あたり来場数。
「君の名は」が1週目192人に対して「鬼滅の刃」は1週目124人。
「君の名は」は上映回数が普通並なので、1回あたりの稼働率は相当高く出ています。
「鬼滅の刃」は「君の名は」の70%程度ですが、コロナ禍により座席が100%で販売されていないことを考慮すると、座席稼働率で「君の名は」に劣っていたかというとそうも言いきれないと考えられます。
「鬼滅の刃」の上映回数は3週目に20%ほど減少していますが来場者数は減りませんでした。結果として1回あたり来場者数は1週目とほぼ変わらない113人まで回復しています。
そう考えると「鬼滅の刃」の1週目と3週目は、販売できる座席はほぼマックスまで埋まっていたのではないかと想像できます。
上映回数を増やす「鬼滅スタイル」で今後どう変わる?
上映回数を最大限に増やした「鬼滅の刃」スタイルは、コロナ禍で洋画作品の延期が相次ぐなどしてスクリーンが空いていたことが背景にあります。
しかし、世界的に見れば「観客の殺到が予測されるビッグタイトルが公開されるタイミングでスクリーンを空ける」のは、実はスタンダードなスタイルなのです。日本では公開本数が多いため、今までこのスタイルは一般的ではありませんでした。好評だったためにロングラン、上映劇場の拡大はあっても、そのタイトルに合わせて映画館での上映回数を最大限に増やす、という施策はほとんど行われていなかったといえます。
今後、顧客ニーズに合わせた「鬼滅スタイル」上映方式が導入されるようになれば、「アナ雪2」のような手堅い動員が予測できるビッグタイトルや、「君の名は。」のように爆発力のあるタイトルが表れた時に、再び映画史に残る記録が生まれるかもしれませんね。