長かった梅雨も明け、例年よりも短くなったものの夏休みシーズンが到来しました。
席数制限などを設けつつ営業してきた映画館も、邦画の新作が増えてきたこともあって7月ころから徐々にかつての賑わいを取り戻しつつあります。
映画館に客足が戻る決め手となったのは、3つの邦画作品でした。映画館の復活がかかった夏映画3作品について、動員傾向を分析してみました。
「ドラえもん」映画、初動4日で大ヒットスタート
8月7日(金)公開、『ドラえもん のび太の新恐竜」の初日2日間の成績が発表されました。土日2日間で動員33万4000人、興収4億1300万円を記録しています。3連休全体でみれば、初日から4日間の累計では動員63万人、興収7億6100万円を記録。
週末ランキング1位発進となりました。いつもと公開時期は異なりますが、安定の「ドラえもん」映画といえそうです。
全国週末興行成績:2020年8月8日~2020年8月9日 (全国動員集計)/出典:興行通信社
作品の満足度も高く、Filmarksでの初動4日での評価は3.8点、映画.comでは3.9点、Yahoo!映画では4.15点の高得点を記録。
CGを使った躍動感のある恐竜描写や、感動のストーリー、リメイク元である「のび太の恐竜」「のび太の恐竜2006」の要素も盛り込まれて、子供だけではなく一緒に観る親世代にとっても懐かしい要素があるなど、高い評価を得ています。
「今日俺」「コンフィデンスマンJP」で夏興行が大復活へ
7月17日公開の『今日から俺は!! 劇場版』は3週連続で1位のV3を達成。4週目に入った今も勢いはとどまるところをしらず、「ドラえもん」に1位を譲った後も2位につけています。累計では動員262万人、興収33億円を突破しました。この夏最初のヒット作品として、華々しい成績を飾りました。
翌週7月23日公開の『コンフィデンスマンJP プリンセス編』も、2週連続2位をキープ。3週目も3位となっています。累計では動員153万人、興収20億円を突破しています。ランキングでは「今日俺」に譲ったものの、同クラスの大ヒットスタートです。
7月から8月にかけての動員推移グラフ
こうしてみると、「今日俺」「コンフィデンスマンJP」公開前の7月頭に比べて、「ドラえもん」公開の8月2週目で動員数が220%までアップしていることがわかります。
ウィズコロナの近況、席数半分での販売などの事情を考慮すれば、「今日俺」「コンフィデンスマンJP」は想定以上の成績を収めていると言っていいでしょう。
「今日俺」「コンフィデンスマンJP」共に、ドラマからの劇場版であり、ドラマ視聴者層を中心に若年層の映画ファンを集客。洋画大作がない今、海外からも驚きの声をもってむかえられる大ヒットとなっています。
また、コロナによる自粛、経済的打撃などで明るい話題が少ない中で、どちらの作品も「コロナ鬱」を吹き飛ばすようなコメディ映画であったことも、ヒットの要因と考えていいでしょう。
郊外型の「今日俺」、都市型の「コンフィデンスマン」、ファミリーの「ドラえもん」
「今日俺」は10代から50代まで幅広い世代で支持されて、土日を中心に郊外の映画館で幅広く集客しました。
一方、「コンフィデンスマンJP」は女性の支持層が厚く、レディースデーを中心に平日都心を中心に集客しています。
そして「ドラえもん」のメイン層は子供連れ、つまりファミリーです。
夏映画3作品客層イメージチャート
それぞれ、重なる部分がありつつも、少しずつ客層が違うようです。さらに、夏のヒット3作品が同日の公開ではなく、それぞれ1週間、2週間と微妙に公開日がずれていることによって、重なり合っている層も「各作品を別の週に観る」という選択肢が生まれています。
夏映画の目玉となるこの3作品が、コロナ禍以降停滞が続いていた映画業界に、様々な客層を呼び戻すことに成功しました。
映画館はウィズコロナ時代に最適のレジャー
先日、映画館の換気設備実証実験結果について当コラムでもとりあげました。興行法で定められている換気設備がある日本の映画館の、元からウィルスの感染が起きづらい仕様となっています。実証実験でも、換気設備の有用性がしっかり証明されました。
換気設備だけではなく、1席飛ばしての販売、非接触検温、チケットもぎりを目視チェックに変更、こまめな消毒・清掃など、各劇場で新型コロナ対策が行われています。
そういった劇場の努力もあってか、GEM Partnersが行った調査結果でも、84%もの方が営業再開後の映画館は安心できる環境であると回答しています。
GEM Partners株式会社/営業再開後の映画館の安心度より引用
【参考URL】映画館のコロナ対策に「安心した」と84%が回答、ウィズコロナの夏のレジャーとして新作映画に期待(GEM Partners)
ライトユーザーも含めて、84%もの方が映画館に安心を覚えている。夏のレジャーとして多くの方が映画鑑賞を検討しているという結果は、映画業界の復活といっていい結果ではないでしょうか?
春から初夏にかけて、コロナの影響による延期、上映中止が相次いでいたため、映画ファンは映画が観たくても観られない状況におかれていました。
それが、夏の話題作品連続公開によって、一気に映画ファンの意欲が高まったのが映画館復活の背景にあるのかもしれませんね。