映画といっても、大手のシネコンで全国的に上映される大作から、限られた上映館や小さめのシアターをメインに上映するいわゆる「ミニシアター系」まで、作品によって規模は様々です。
もちろん、大作であればたくさんのお客さんが見てくれますし、CMを上映するならやっぱり高い興行収入を見込める作品の方が効果的……かと思えばそうとも限りません。
以前、コラムでも触れましたが、最終興行収入はあくまで上映している全期間を合わせた数字。
公開初動2週間の1館当たりの動員数「館アベレージ」で見ると、興味深いことがわかりました。
館アベレージについては、こちらのコラムも参考にしてみてください。
>【興行収入とは違う?シネアド的2018年映画ランキング発表!】
アニメ作品は初動が強い傾向
2019年6月15日~16日の動員数ランキングは、非常に興味深い結果になっていました。
2019年6月15日~16日「全国映画動員ランキング」
ランキング | 公開週 | タイトル |
---|---|---|
1 | 2週目 | 『アラジン』 |
2 | NEW | 『メン・イン・ブラック:インターナショナル』 |
3 | 3週目 | 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 |
4 | NEW | 『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』 |
5 | 5週目 | 『コンフィデンスマンJP』 |
6 | NEW | 『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』 |
7 | NEW | 『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』 |
8 | 2週目 | 『海獣の子供』 |
9 | 9週目 | 『キングダム』 |
10 | 4週目 | 『空母いぶき』 |
なんと、10位までのランキングのうち、4作品がアニメ作品となっています。うち、上記ランキング表でイエローにマークされた3作品は、初登場でランクインしています。
たとえば『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』は、人気アニメ続編を描く劇場版新作シリーズ。「最終章 第2話」とあることからもわかる通り、劇場版ながら続き物となっています。しかも最終章は全6話予定。この話で完結というわけではなく、2話は物語の途中になるわけですね。それでも初登場の全国動員数は4位となっています。
ちなみに『ガールズ&パンツァー 最終章 第1話』は2017年12月9日の公開。最終章第1話の2018年度の館アベレージランキングはなんと13位!
1作目から1年半のブランクがあり、さらに完結編でないにも関わらず初登場で4位を取るのは、それだけ映画館にすぐ足を運ぶ固定ファンが多い作品ということになります。安定した動員が見込めるコンテンツであるということですね。
しかも、2019年公開の館アベレージランキングでも、6月時点で総合7位と好成績を収めています。
「青春ブタ野郎」は上映31館でも大作レベル?
この週のランキング中でも、特に注目するべき作品が『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』です。
2018年10月より12月まで放送されたテレビアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(通称「青ブタ」シリーズ)の、アニメ化されていない原作6・7巻のストーリーとなる完全新作の劇場版。初の劇場版ですが、動員ランキングでは初登場全国7位という好成績を出しました。
特筆するべき点はこの映画の公開規模は全国でたった31館しかなかったということ。
それにも関わらず、全国動員ランキングに食い込むほどに高稼働だったということなんですね。他にランキングに食い込んだ「ガルパン」「うた☆プリ」といった作品は、今までにも劇場版が何度か作られており前作の実績がわかる状態ですが、「青ブタ」に関しては前作実績すらありません。シネアド業界の我々から見ても気づかなかった大穴のスマッシュヒット作品でした。
大作と比べると、全国動員数ではさすがに公開規模が違いすぎますので大幅に引き離されていますが、館アベレージで見ると「青ブタ」は大作と同じくらいのパワーがあります。
2019年公開映画のアベレージランキングでは、6月時点で総合5位という結果に。ちなみに5位以上は『名探偵コナン 紺青の拳』『アラジン』『アベンジャーズ エンドゲーム』『キングダム』と上映館数も300館規模のものがほとんど、誰もが納得の超大作ばかり。その大作の中に、小規模公開の「青ブタ」が食い込んでいるわけですので、驚きくべき結果です。
ファンに合わせた上映形態を実施
同じ週、全国動員ランキング6位の『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』。この作品の面白いところは「ライブ上映」形式での公開があること。
通常、劇場版の映画は音楽ものであっても、映画としてのストーリーがあり、歌うシーンもあり……といった構成になっていますが、「うた☆プリ」は最初から最後まで「作中アイドルのライブ映像を上映」というスタイルをとっています。最初から最後までアニメ作品に出てきたアイドルグループのライブシーンのみで構成されています。歌、MC、アンコールといった、まさに「ライブビューイング」に近い体験ができる構成です。作中でも、キャラクターはあくまで会場にいるファンのために語り掛けるので、まさに「ファンのためのライブ」にきた感覚になります。
あえてストーリー要素をなくし、アイドル物のアニメという素材を活かした新しいタイプの劇場版といえます。長く続いた実績があるアニメ作品だからこそ、できた形式といえるかもしれません。週替わりのボイス演出・来場者特典などもあり、息の長い動員が続いています。
アニメのファン層にダイレクトな効果が期待
2019年6月15日~16日の動員数ランキングは、アニメ作品が初動でかなりの高稼働をする可能性が高いということがデータで明示された非常に面白い結果であったと言えます。
青春キラキラ系映画にも言えることですが、劇場版アニメの特徴は『客層がはっきりとしている』点。TV放映時のファンが、そのまま映画も観に来てくれる可能性が高い作品です。
小規模上映でも初動で高稼働をするため、初週2週間の上映が基本となるシネアドとは、実は相性が良いのです。
小規模公開でも、そのアニメと商品やサービスの客層が一致しているなら、狙った客層にダイレクトにアピールする効果が期待できるということですね!
シネアドの出稿を検討されるときは、ファン層の安定したアニメ作品に注目してみるのもよいかもしれません。