
今年も残すところ2週間となりましたね。映画館では年末興行の話題作が並ぶ時期となりました。
今年も当社のコラムをご愛読いただき、ありがとうございました!
振り返れば2025年は、映画業界にとって躍進の一年でした。劇場には多くの人が足を運び、作品の熱量は映画館を超えて大きな盛り上がりを見せました。
そこで今回は、当社が注目した2025年の映画業界におけるトピックをご紹介します。
一年の締めくくりに、今年の映画業界を一緒に振り返りましょう!
1. 2025年の映画興行は絶好調 — 過去最高興収に迫る勢い!
2025年の日本映画興行は多くのヒット作が生まれ、非常に力強い推移を見せました。なかでも『鬼滅の刃 無限城編』や『国宝』といった話題作が市場を牽引し、業界全体としてコロナ禍前のピークであった2019年の興行収入に迫る勢いを見せています。
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
とりわけ2025年を象徴するのが、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』という異次元とも言える超大型ヒットの存在です。公開から5か月で興収385億円を突破し、前作の「無限列車編」に続く驚異的な興行展開は映画業界全体に強い追い風をもたらしました。
ただ一方で、その一本に依存するのではなく、邦画や洋画などが着実に動員を重ね、興行全体に厚みをもたらした点も見逃せません。今年は興収10億円を超えるヒット作が40本以上にのぼる見通しとなっており、アニメが牽引しつつも、邦画や洋画がそれぞれ確かなヒットを重ねて後押ししました。特定のジャンルに偏らず多様な作品が映画館に人を呼び戻した一年だったと言えるでしょう。
2. 映画『国宝』22年ぶりの邦画実写No.1、社会現象級の広がりへ
数あるヒット作の中でも2025年の映画業界を語るうえで、『国宝』の大ヒットは欠かせない出来事です。公開直後から高い注目を集めていた本作は、作品の完成度や俳優陣の演技が口コミを通じて広まり、その勢いが途切れることなく観客動員を押し上げました。その結果、約22年ぶりに邦画実写として歴代興行収入No.1を更新する快挙を成し遂げ、邦画復権を象徴する作品となりました。公開から6か月以上が経った現在も全国動員ランキングTOP10内にランクインしており、驚異的なロングランヒットを更新しています。
社会現象級大ヒットへと押し上げた要因は“鑑賞者によるポジティブな口コミ”にあります。
「久しぶりに映画館で涙が止まらなかった」「これは劇場でこそ体験すべき作品」といった口コミやSNSでの投稿が、ミドル・シニア層のファンだけでなく幅広い層へと浸透。そうした口コミの連鎖が、動員をさらに後押しする形となりました。
いまやSNSでの口コミや投稿は、映画との距離を縮め、観客の熱量を次の観客へと伝搬させる重要なプラットフォームとなっています。映画館での体験とSNSでの発信が連動することで、作品がより多くの人へ届き、ヒットを後押しする構造が定着しつつあります。
同じように様々な場面でSNSが重要な情報源の一つになっている人は多いのではないでしょうか。
3. シネコンの新規オープンと歴史ある映画館の閉館
全国各地で新シネコンのオープンや長い歴史を持つ劇場の閉館など映画館業界は日々再編とアップデートを続けています。
今年は新たに6つのシネコンがオープンしました。
3月に駅直結の商業施設minamoa(ミナモア)に「MOVIX広島駅」がオープンし、県内初導入の設備が盛り沢山で話題となりました。さらに、岐阜県では東濃地方に21年ぶり映画館復活で注目を集めた「イオンシネマ土岐」が4月に、10月には長野県に「イオンシネマ須坂」がオープンし、いずれも最新設備や快適性・利便性を重視した劇場づくりがなされています。
MOVIX広島駅とイオンシネマ須坂の開業レポートは、弊社コラムでも取り上げています!
一方で、歴史ある劇場のクローズも相次ぎました。
東京・銀座の「丸の内TOEI」は1960年の開館以来、約65年にわたり多くの映画ファンに親しまれてきました。高度成長期の映画館として地域の象徴的存在でしたが、東映会館ビル老朽化による再開発計画に伴い2025年7月に幕を下ろしました。長年にわたり日本映画を支えてきた劇場の閉館は、映画業界のみならず多くの映画ファンに大きな衝撃をもたらしました。
また、島根県の「松江東宝5」も約30年の歴史を経て閉館しました。 閉館を惜しむ一方で、同地には新たに「イオンシネマ松江」がオープンとあって、期待を寄せる声も多数見られ、映画館が地域文化として根付いていることを実感させられる出来事でした。
4. コンセッションの利便性UPと鑑賞料金の多様化
こうした劇場の新設や再編と並行して、映画館での過ごし方そのものにも変化が広がりました。
一部の映画館チェーンでは鑑賞料金の見直しが行われました。
これまで大手シネコンチェーンは一般鑑賞料金2,000円と横並びの価格設定が主流でしたが、今年ティ・ジョイとMOVIXチェーンが鑑賞料金の改定に踏み切り、各興行会社ごとに料金体系が異なる時代になりました。料金体系が異なることで来場動向に今後影響が出てくるのか注目ですね。
コンセッション(飲食売店)では、セルフオーダー端末やモバイルオーダーの導入が大きく進み、上映前の行列を避けてよりスムーズに商品を受け取れる環境が整ってきています。今年、新たにオープンした殆どの劇場でセルフもしくはモバイルオーダーが導入されています。
TOHOシネマズ日比谷は11月にセルフ/モバイルオーダーシステムを導入し、さっそくSNSでは「スムーズに購入できた」「快適になった」と大きな話題となっていました。
5. 世界のヒットが示す“IP作品の強さ”
視点を海外に向けると、グローバル市場でも映画の勢いは健在です。
全世界の映画興行成績を集計・分析しているBox Office Mojoの発表によると、2025 Worldwide Box Officeでは以下のランキングになっています。

IPをベースにした作品が上位を占めました。シリーズやゲーム・アニメ原作など、ブランド力のあるコンテンツが世界中の観客を動かす力を持っていることが改めて示されています。
全世界興行収入1位は中国のアニメ映画『ナタ 魔童の大暴れ』(英題:Ne Zha 2)です。2019年に中国で公開されて大ヒットを記録した「ナタ 魔童降臨」の続編にあたり、日本でも広く親しまれている「西遊記」や「封神演義」などに登場する神話の少年戦士で中国の国民的キャラクター・ナタを主役に描いた冒険譚です。
2025年春節に中国で封切られると映像の圧倒的なクオリティに絶賛の嵐、瞬く間に社会現象化し、世界累計興行収入は4週間余りで145億元(約3,000億円)を突破する快挙を達成しました。日本では2025年4月に字幕版が公開されていましたが、さらに12月26日より日本語吹替版の公開が決定しています。
さらに注目は「マインクラフト」です。ゲームとして圧倒的な人気を誇る本作品は、全世界興行収入ランキングで現在4位、全米興行収入ランキングでは1位を獲得。ゲームファンだけでなく、これまで映画館に足を運ばなかった層も巻き込み、グローバル規模での興行成功を収めました。スーパーマリオに続き、ゲーム発の映画が一過性の話題にとどまらず、映画市場における定番ジャンルとして確立しつつあります。
また、日本発の「鬼滅の刃」も全世界興行収入ランキングに名を連ね、日本のアニメ文化が国境を超えて世界中で注目されています。アニメ・漫画原作という強力なIPを持つ日本映画が、海外市場でも十分に競争力を持つことを改めて証明しました。
以上、2025年の映画業界を振り返っていきました。
2026年も今年以上に期待作の公開が控えており、映画館での鑑賞体験がさらに広がることが期待されます!


