映画『変な家』が快進撃を続けています。
4/7時点で興収はすでに30億円を超えています。ホラー・サスペンスジャンルで、興収30億円クラスの作品が出ることは珍しいです。
『変な家』は何故ここまで人の心を集めることになったのか、気になりますよね!今回は『変な家』について分析してみました。
公開直後より勢いは止まらず!口コミは賛否両論?
『変な家』は、3月15日に公開されると、春休みを迎えた学生らを軸に高稼働。なんと2週目は初週以上の動員を記録しました。3週目以降も落ちが少なく4週連続で1位を獲得するなど、週末ランキングを席巻。3週目で興収30億を超え、4月7日時点では累計動員数277.8万人、興行収入34.5億円を記録しています。興収10億円が邦画のヒットラインとされていることを考えると、この作品の勢いいかにすごいことかわかるかと思います。
今年の作品の中でも1月に公開となった『ゴールデンカムイ』の成績をすでにわずか3週で超えています。2024年の邦画実写作品のナンバーワンとなる成績です。『変な家』にはIMAXなどのラージフォーマットがないので、動員は興収以上に差が開いています。
ちなみに、この成績は昨年大ヒットした『ミステリと言う勿れ』(最終興収48億円)の途中成績と近く、最終40~50億円が狙える大ヒットとなりそうです。
一方で、口コミは賛否両論。9日時点での各映画レビューサイトの評点は2.8~3.1とあまり高くはありません。しかし、話題性の高さで落ちの少ない興行をしていることからロングランが見込まれ、まだまだ動員が伸びそうです。
『変な家』とはどんな作品なのか?
※『変な家』youtube動画版
『変な家』の原作についておさらいしてみましょう。
『変な家』は「オモコロ」というWEBメディアに、2020年10月に「【不動産ミステリー】変な家」として掲載されたのが初出です。数日後にYouTube版も投稿され、なんと2024年4月現在で2069万回の再生数を誇っています。
『変な家』は筆者の元に寄せられたある間取り図を元にとある家にまつわる秘密を解き明かしていく、モキュメンタリー風の「不動産ミステリー」です。21年には、エピソードを追加した小説版が発売されました。コミカライズも3巻まで発売されています。日販によると、2023年最も売れた小説が『変な家』なのだそうです。様々な媒体でヒットを飛ばしていることから、認知度の高さがうかがえます。特にYouTubeの人気はすさまじいものがあります。
映画版は、建築家の「栗原さん」とYoutuberの主人公(映画版では雨宮/雨男)が間取りを見ながら謎を解き明かしていくストーリーになっており、小説版をベースにしています。
コラム担当の私も実際に鑑賞しましたが、原作よりもホラーテイストが強くなっているように感じました。原作とは設定が異なっている部分もあります。音で驚かせるいわゆるジャンプスケアの多い作品なので、驚かし系のホラーが好きな方向けの映画になっていると思います。
『変な家』は10代に刺さる映画だった
上記は、映画『変な家』の客層を示したグラフです。10代、20代が約7割をしめており、特に10代が全体の過半数を占めるほど層が厚くなっています。このグラフから、映画『変な家』のメイン層は、Z世代(若年層)の男女がメイン客層であることがわかります。原作YouTube動画の視聴者層が多く劇場に足を運んだことがうかがえます
邦画ホラー実写はティーン世代に人気があり、『変な家』もホラーテイストの映画ということでジャンルに興味を持つ世代に刺さったのではないでしょうか。ティーンが春休みに入る時期に公開したことも、映画『変な家』の追い風になっていることが推測されます。
また『変な家』は映倫区分は「G」。レーティングが全年齢向けの内容となっています。小学生でも親の同行や指導なしで観られることも、若い世代を集客する要因となっているのでしょう。私が足を運んだ都内劇場は10代が多め、平日にもかかわらずシアターの8割が埋まっていました。ファミリーでの鑑賞も見られて、話題になって客層の幅が広がりつつあることを感じました。
タイトルのわかりやすさが、ライト層の集客に影響する?
『変な家』と似た作品に、『事故物件 恐い間取り』(20年8月公開)があります。不動産ネタのホラーということで、共通点があります。正確には『変な家』は(少なくとも原作でのカテゴライズは)「不動産ミステリー」なのですが、内容的にはホラーの系譜を感じさせるものだったので、作風的に同ジャンルと言っていいように思います。客層もZ世代がメインで、『変な家』と重なります。「家」という誰にとっても身近なテーマがカギとなっているのでしょう。
『事故物件 恐い間取り』も興収23億円のスマッシュヒットになりました。
この2作品には不動産ネタという以外にももう一つ共通点があります。それは「タイトルのわかりやすさ」です。
ヒット作品になるには、コアな映画ファンだけではなく、普段はあまり映画館に訪れないようなライト層にも選んでもらわなければなりません。わかりやすくキャッチ―なタイトルの作品があると「これを観てみようかな?」と気持ちになるでしょう。『変な家』も『事故物件』も、わかりやすく気になるタイトルですからね!
ホラー・サスペンスジャンルのわかりやすいタイトルの映画では、『スマホを落としただけなのに』(興収19.6億円)、『カラダ探し』(11.8億円)などもヒット作となっています。
『変な家』は、原作の認知度、メイン客層の若者が行きやすい春休み時期の公開、タイトルや題材のキャッチ―さなど、さまざまな要因が重なって特大ヒットとなったと推測できます。
今後、この勢いがどこまで伸びるのかが興味深い作品となりそうです。